日本の移植事情
日本の移植事情について考えてみた。
現状、他国との差、なぜ少ないのか。
〜臓器移植法〜
日本では1997年に「臓器移植法」が施行され、脳死患者からの臓器提供が可能になった。
その後2010年に法改正され「改正臓器移植法」となった。
改正で何が変わったのか。
大きな違いは、脳死患者本人の提供の意思が分からなくても、家族が承諾すれば提供することが可能になった点。
これにより、意思確認が困難な子どもからも臓器提供が行えるようになり、子どもの移植手術に道が開けた。
2010年に改正される以前は、移植が必要な子どもは国内での臓器提供を受けられず、海外への渡航移植に頼るしかなかった。
〜提供できる臓器〜
心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸、眼球
〜移植待機者(レシピエント)数〜
合計約15000人(2021年9月末時点)。
この内、次女が該当するのは
0〜9歳の心臓移植待機者48人。
〜年間の移植手術の実施件数〜
年間件数(脳死下)約400件。
2019年過去最多479件。内18件が18歳未満。
待機者数にたいして毎年2〜3%の人しか移植できていない現状。
2020年はコロナ禍により大幅減少。
コロナ対応で病床が足りず、臓器提供者(ドナー)が出たとしても移植手術は行わないと決めざるを得ない病院もあった。
子どもの心臓移植については1年以上0件が続いた。
〜移植を受ける順位〜
心臓移植の場合
・ドナーとレシピエントの血液型の適合
・ドナーとレシピエントの体重差
・治療の状況(重症度)
・待機期間
などを元にして決まる。
〜外国との差〜
人口およそ3倍のアメリカとの比較
日本の年間移植件数:約400件
アメリカの年間移植件数:約20000件
日本で移植できるまで(心臓の場合)
平均待機日数:約1100日
アメリカで移植できるまでの
平均待機日数:約50日
アメリカでは2ヶ月〜3ヶ月で移植できることが多い。
日本では3年ほどかかることが多く、現在7年以上待機している人もいる。
ここからはデリケートな話題になります。
考え方はそれぞれだと思います。
〜日本の移植件数が少ない理由〜
日本人の臓器提供の意思表示(意思表示カード、免許証、保険証など)をしている割合は約13%。
臓器提供や移植について知る機会が少なく、浸透していない(数ヶ月前まで私自身も無知)。
また、イメージから抵抗感や拒否感をもつ人も多いと考えられる。
諸外国では臓器提供や移植が一般的な医療行為として浸透しているが、日本では倫理的な観点などから特別視されている。
しかしそれも無理はなく、日本では1997年に臓器移植法が施行されたが、諸外国ではそれより30年ほど前から移植手術が普及しはじめている(日本でも数件の移植が行われたが強い批判を受けていた)。はじめの段階で日本は30年分の遅れが生じている。
また日本は渡米移植に頼っている現状があるが、アメリカ側へ2億円以上の保証金を支払う負担があることや、移植は自国で行うことを原則とした国際的な宣言(2008年イスタンブール宣言)があることから、他の国は自国での移植普及への取り組みを強めてきた。
例えば韓国は日本より2年遅く1999年に臓器移植法を施行しているが、今では年間1800件ほどの移植件数となっている(人口約5000万人)。
これは国をあげて移植普及のための施策や複数回の法改正を行った結果だと思われる。
また、フランスなど、生前に臓器提供しないという意思表示をしていない限り臓器提供するものとみなされる、という国もある。
日本もコロナの影響を除けば少しずつ件数は増えてきているが、政策や教育など国をあげて取り組まなければ、国内での移植による救命はまだまだ厳しい現状だと思う。
移植手術を受けた人の10年生存率は上がってきていて、90%以上。
移植後の生活では、拒絶反応を防ぐために免疫抑制剤を生涯飲み続ける。
しかし免疫を弱めているため、ただの風邪をひいただけでも重症化しやすくなるなど、いくつかのリスクがある。
それでも、社会復帰ができて普通に生活が送れる。
次女や私自身の病気が発覚して、ショックであることは間違いないが、移植について学ぶ意欲がわいたのは嬉しい。
臓器提供するかしないか、移植に賛成か反対かは完全に人それぞれ、考え方次第。
でも知ったうえで考えて決めるか、何も知らないままイメージで決めるかでは、大きな違いがあると思う。
救える命の数が変わるかもしれない。
自分の家族が亡くなり、臓器を提供するかどうか決断する場面は、想像するだけでもきついものがある。そして現実になったときはその想像を越えた状況になるのだと思う。
それでも、事前に知って考えておくことで何かの助けになるかもしれない。
自分に何かできることはないか今後も考えて、実践していきたい。