親父と娘〜心臓移植を越えて乾杯へ〜

同じ心臓病の娘と親父。娘の移植を乗り越え乾杯を目指す。娘を守るかっこいい親父でありたい。

あの日から今まで④(4月〜10月)

 

3月24日から付き添い入院が始まった。

 

2週間ごとに夫婦で交代して、次女への付き添いと長女との生活をなんとか回している。

 

 

付き添い生活は想像していたより過酷で、コロナ対策のため親は完全に監禁状態になっている。

 

基本的に病室から出られず、次女が寝ているときなどに大急ぎでシャワーや売店での買い出しを済ませる。

 

看護師は常に忙しそうで、次女の飲み薬の仕分けや投薬は親がやる。

 

コロナで面会も禁止のため、会いに来られる人もいない。

 

そんな状況の中でも、次女の成長をみられる喜びは大きい。

 

 

補助人工心臓と太い管でつながっている次女の基本スタイルは、ベッドの上でずっと仰向け。

両足は固定バンドがつき、寝返りもさせてあげられない。

 

しかしそれでも、次女はこの数ヶ月でゆっくり成長してくれている。

 

手の使い方を理解しはじめて、ベッドにたくさんある人形やおもちゃを掴んで振り回したりぶん投げたりできるようになった。

ペンを握らせるとグシャグシャと線を引くこともできた。

 

絵本も大好きで、興味津々で聞いてくれる。

とくに長女が読み聞かせしてくれている動画を見せると、大喜び。

 

パッパッパ〜と謎の声も出す。

 

リハビリの先生が日々鍛えてくれているおかげで、首もすわったし、人工心臓があるためいつでも自由にとはいかないがイスに座ることもできるようになった。

今は立ち上がる練習も始まっている。

 

 

毎日たくさんの薬を飲み、週に何回も注射される。

こんなに過酷で命懸けの環境なのに、次女は成長してくれている。

 

今では注射一本程度では泣かないときもあり、頼もしい。

 

子供の生きる力の強さを思い知らされた。

支えてるはずの親が、支えられている。

 

 

 

長女も、2週間ごとに会うせいか、毎回再会する度に成長を感じさせてくれる。

 

3歳になり会話がだいぶ成り立つようになったので、良き話し相手になってくれる。

しかし親が全力で遊び相手をしないと務まらないぐらいの体力お化けになってきた。

 

救急車を見ると次女が乗っているのかなと話す。

次女のいる病院に似た建物を見ると、次女がいるかなと話す。

 

3歳なりに、妹のことをちゃんと心配してくれている。

 

姉妹が一緒にいられたのは1月の2週間だけ。

それでも、会えなくてもちゃんとお互いを認識している。

この子たちを必ず再会させる。

 

 

 

長期入院になると、お金が心配になる。

 

危険で手術だらけだった3月の医療費、確認したところ、、

2500万円!

請求されたことのない金額。

 

しかし日本の医療制度はすごかった。

健康保険で6歳までは2割負担、高額療養費制度、難病助成、すべて使ったところ、

 

2500万円

自己負担1万6千円

 

 

 

これは本当に心から、国と自治体に感謝。

今回、こういう制度を知ることができたのは大きな学びになった。

 

 

 

そしてこの数ヶ月間、常に国内とアメリカの移植手術に関する動向をみてきた。

 

日本国内では元々小児の臓器提供は非常に少ないが、コロナ禍になってから丸1年間は完全に0件だった。

そして1年以上ぶり、今年の6月から8月に4件の臓器提供があった。

コロナが落ち着いてきているので今後は増えていくのかもしれない。

不謹慎と思われるだろうが、私たちは増えることを望むしかない。

 

 

アメリカでも臓器提供数はコロナによって減っていたが、それでも数ヶ月の待機で移植できることが多いようだった。

 

 

数億円かけて渡米。。

何度も頭をよぎったし、そうしなければ次女は助からないんじゃないかと不安に潰されそうになる。

 

しかし現状、様々な理由から渡米を目指すことはできないと病院から告げられている。

 

今の環境を変えず国内で待つことが、次女にとって負担も増えないし、最も安全。

それは頭の中では分かっている。。

 

 

私は次女がこの病気になるまで、移植のことも臓器提供のことも、全くの無知に等しかった。

そんな人間が言って良いことでないことは分かっているが、、

どうか日本での移植医療がもっと普及してほしい。

YES・NOどちらでも構わないから、臓器提供の意思表示をする人が増えてほしい。

願っています。

 

 

 

これまで考えたこともなかった事を色々と考えた月々だった。

 

周りの方々にも、こちらの都合で一方的に相談して、心配と迷惑をかけつづけている。

申し訳なくて心苦しく思う。

 

 

だからこそ、なんとしても次女を家に連れて帰る。

 

姉妹でおもちゃの取り合いをしてほしいし、抱っこをせがんでほしい。外の広さを知ってほしい。

しっかり生きて大人になって、親父と乾杯してほしい。無理にとは言わないけど。。

 

この目標を叶えるのが自分に課せられた役割であり、自分の人生の意味だと思う。

 

 

まずは今の毎日を次女と長女が楽しいと思ってくれるように、病室でも家でも、全力で楽しませる事から!